歯のクリーニングが必要ないという知恵袋の疑問を解説

「毎日きちんと歯磨きをしているのに、歯科医院でクリーニングを受ける必要はあるの?」と疑問に思ったことはありませんか?Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでも、「歯のクリーニングは必要ないのでは?」「歯石取りをしても意味がない?」「なぜ何回も通う必要があるの?」といった疑問が見られます。

一口に「歯のクリーニング」といっても、その内容や目的はさまざまです。歯石の除去や歯面清掃だけでなく、歯周病の状態に応じた処置や、歯周治療後のSPT(歯周病安定期治療)、メインテナンスなどが行われることもあります。

また、必要なケアや通院の間隔は、すべての人に共通するものではありません。歯や歯肉の状態、歯周病の既往、プラークコントロールの状態、むし歯や歯周病のリスクなどによって異なります。そのため、「クリーニングは必要」「必要ない」と一律に考えるのではなく、何を目的として、どのような処置を受けているのかを理解することが大切です。

この記事では、「歯のクリーニングは必要ない」という疑問をもとに、歯石除去や歯面清掃の目的、セルフケアとの違い、通院回数、保険診療と自費診療の考え方について、歯科衛生士の視点からわかりやすく解説します。

この記事でわかること

・「歯のクリーニング」と呼ばれる処置の目的と違い
・セルフケアと歯科医院で行うケアの役割
・歯石除去はなぜ行われるのか
・通院回数やメインテナンスの間隔が人によって異なる理由
・保険診療と自費診療で行われるケアの考え方

目次

歯のクリーニングが必要ないと言われる知恵袋の疑問

Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでは、「毎日きちんと歯磨きをしているのに、歯のクリーニングは必要?」「痛いところもないのに定期的に通う意味はあるの?」といった疑問が見られます。歯のクリーニングにかかる費用や時間、何度も通院することへの負担を考えると、「本当に必要なのかな?」と疑問に感じるのも自然なことかもしれません。

ただし、「症状がないこと」と「お口の中に問題がないこと」は必ずしも同じではありません。また、歯科医院で行われるケアの必要性や内容は、すべての人に共通するものではなく、歯や歯肉の状態、歯石の付着、セルフケアの状態、歯周病の既往やリスクなどによって異なります。

そのため、「クリーニングは必要」「必要ない」と一律に考えるのではなく、何を目的として行うのかを理解することが大切です。

ここからは、「歯石取りは意味がない?」「毎回同じことをするのはなぜ?」「何回も通う必要がある?」といった疑問について、一つずつ整理していきます。

歯石取りは意味がない?

Yahoo!知恵袋などでは、「歯石を取っても、しばらくするとまた付いてしまう」「歯石を取ったあとも特に変化を感じない」といった理由から、歯石取りに意味があるのか疑問に感じる声が見られます。確かに、一度歯石を除去しても、その後まったく歯石が付かなくなるわけではありません。

歯石は、歯面に付着したプラーク(細菌性バイオフィルム)が、唾液などに含まれる無機成分によって石灰化することで形成されます。そのため、歯石のできやすさや付着する場所、量には個人差があります。

また、歯石を除去しても、痛みがなくなったり見た目が大きく変化したりするとは限らないため、「何のために取っているのだろう?」と感じる方もいるかもしれません。歯石そのものが歯周病の唯一の原因というわけではありません。歯周病の発症や進行には、歯面や歯周ポケット内に存在するプラーク(細菌性バイオフィルム)が大きく関係しています。

一方で、歯石が付着していると、その表面にプラークが付着・停滞しやすくなり、毎日のセルフケアだけでは清掃しにくい環境になります。

そのため、歯石除去は単に「固まった汚れを取って歯をきれいにする」ことだけが目的ではなく、プラークコントロールを行いやすい口腔環境を整えるためにも行われます。

「また歯石が付くから意味がない」のではなく、歯石が形成される背景や付着している部位、歯周組織の状態などを確認しながら、必要なケアを考えることが大切です。

歯のクリーニングにデメリットはある?

Yahoo!知恵袋などでは、「歯のクリーニングを受けたあとに歯がしみるようになった」「歯と歯の間が広がった気がする」といった体験談が見られることがあります。

ただし、一口に「歯のクリーニング」といっても、歯面の着色やプラークを除去する処置と、歯周治療として行うスケーリング・ルートプレーニングなどでは、目的や処置内容が異なります。

特に歯石除去などの処置後には、一時的に次のような変化を感じる場合があります。

・冷たいものなどがしみる
・歯と歯の間が広くなったように感じる
・歯肉に違和感や軽い痛みを感じる
・炎症のある歯肉から処置中に出血する

歯周病などによって歯肉が腫れている場合、歯石やプラークを除去して炎症が改善すると、腫れていた歯肉が引き締まります。その結果、それまで腫れによって見えにくかった歯と歯の間の空間が見えるようになり、「クリーニングをしたら隙間ができた」と感じることがあります。これは、処置によって健康な歯肉が削られて隙間が作られたということではありません。

また、歯肉退縮などによって歯根面の象牙質が露出している場合には、歯石除去後に冷たいものなどの刺激を感じやすくなり、一時的に知覚過敏の症状が現れることがあります。

こうした変化があると、「クリーニングをしたことで歯が悪くなった」と感じるかもしれませんが、処置後に起こり得る一時的な症状と、処置によるトラブルは分けて考える必要があります。

また、必要な処置の内容や頻度は、歯周組織の状態や歯石の付着状況などによって異なります。「クリーニングだから毎回同じ処置をする」のではなく、その時のお口の状態に合わせて必要なケアを選択することが大切です。

毎回同じ場所の磨き残しを指摘されるのはなぜ?

Yahoo!知恵袋などでは、「歯医者に行くたびに同じ場所の磨き残しを指摘される」「前回言われたとおりに磨いているつもりなのに、また同じことを言われた」といった声が見られます。

毎回同じことを言われると、「ちゃんと磨いているのに」と感じたり、自分の努力が伝わっていないように思ったりすることもあるかもしれません。

歯磨きには、一人ひとりの歯並びや歯の形、歯ブラシの動かし方などによって、磨き残しが生じやすい部位があります。例えば、歯が重なっているところ、奥歯の後ろ側、歯と歯の間、歯肉との境目などは、歯ブラシの毛先が届きにくいことがあります。

そのため、毎回同じ場所にプラークが残っている場合には、その部位が普段のセルフケアで清掃しにくい場所である可能性があります。

一方で、同じ場所を繰り返し指摘するだけでは、セルフケアの改善につながらないこともあります。前回と比べて改善したところを確認したり、歯ブラシの当て方を変えたり、必要に応じてデンタルフロスや歯間ブラシなどの清掃用具を取り入れたりと、その人に合った方法を考えることも大切です。

毎回のチェックは「できていないところを指摘する」ためだけではなく、セルフケアの変化を確認し、より磨きやすい方法を一緒に考える機会として活用できます。

歯のクリーニングで通院回数が何回もかかるのはなぜ?

Yahoo!知恵袋などでは、「1回で全部きれいにしてほしいのに何回も通うことになった」「上と下に分けて処置するのはなぜ?」といった疑問が見られます。

仕事や家事などで忙しいなか、何度も通院することを負担に感じる方もいるでしょう。

通院回数が増える理由は、「歯のクリーニング」として行われている処置の内容によって異なります。単に歯面の着色やプラークを除去する場合と、歯周病の治療として歯石を除去する場合では、必要な処置や進め方も同じではありません。

歯周病の治療では、歯周組織検査によって歯周ポケットの深さや出血、歯石の付着などを確認し、その結果をもとに歯周基本治療を行います。歯肉縁下に歯石が付着している場合には、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)などを複数回に分けて行うこともあります。

歯石の付着量や処置する範囲、歯周ポケットの状態、必要な処置時間などによっては、一度にすべてを行うよりも、部位を分けて進めることがあります。また、歯周基本治療を行ったあとは、再度検査を行い、歯肉の炎症や歯周ポケットなどがどのように変化したかを確認する「再評価」も重要なステップです。

保険診療の場合には、こうした歯周治療の流れに加えて、診療報酬上の算定要件なども関係します。

そのため、通院回数だけを見ると「同じクリーニングを何度もしている」ように感じても、実際には検査や歯石除去、セルフケアの確認、再評価など、それぞれ異なる目的で進められている場合があります。

保険適用と自費診療の違い

「保険のクリーニングと自費のクリーニングは何が違うの?」「自費で受けるメリットはある?」という疑問も、Yahoo!知恵袋などで見られるテーマの一つです。

「クリーニング」という言葉は幅広く使われていますが、保険診療と自費診療では、単純に「安い・高い」「短時間・長時間」という違いだけではありません。大きな違いは、その処置を行う目的や保険診療の対象となるかどうかにあります。

比較項目保険診療のクリーニング自費診療(PMTCなど)
主な考え方疾患の診断や治療、管理など、保険診療として認められた範囲で行う審美的な目的や、保険診療の対象とならない希望に応じたケアなどを行う
検査病状を把握し、必要な治療を行うために検査を実施する内容や目的によって異なる
処置内容歯周組織の状態などに応じて、必要な検査・歯石除去・歯周治療などを行う医院ごとに設定された内容に沿って、歯面清掃や着色除去などを行う
通院回数・時間病状や治療内容によって異なる医院のメニューや口腔内の状態によって異なる
費用保険診療のルールに基づき、一部負担金を支払う全額自己負担。料金は医院や内容によって異なる

保険診療では、歯周病などの疾患に対して、検査結果をもとに必要な治療や管理を行います。そのため、歯周組織検査や歯石除去などを、口腔内の状態に応じて段階的に進めることがあります。

一方、自費診療で行われるクリーニングは医院によって内容が異なり、着色除去や歯面清掃など、審美面や患者さんの希望に合わせたメニューが設定されていることがあります。

「PMTC」という言葉も自費のクリーニングを指す言葉として使われることがありますが、医院によって内容や位置づけが異なるため、「PMTC=必ず自費」「自費だから特別な機器を使用する」と一律に考えることはできません。

そのため、保険と自費のどちらが優れているかという比較ではなく、「何を目的として、どのような処置を受けるのか」を確認することが大切です。

歯のクリーニングは本当に必要ない?知恵袋の疑問を整理

ここまで、Yahoo!知恵袋などで見られる歯のクリーニングに関する疑問について紹介してきました。

「毎日歯磨きをしていればクリーニングは必要ない?」「歯石を取ってもまた付くなら意味がない?」と感じる背景には、歯科医院で行われるケアの目的や、セルフケアとの違いがわかりにくいことも関係しています。

歯科医院で行われるケアの必要性は、すべての人に同じではありません。歯周組織の状態や歯石の付着、セルフケアの状態、歯周病の既往やリスクなどによって、必要な処置やメインテナンスの間隔は異なります。

ここからは、毎日のセルフケアだけでは対応しにくい部分や、歯石除去・メインテナンスの目的などを整理しながら、「歯のクリーニングは必要ない?」という疑問について考えていきます。

毎日の歯磨きだけではケアしにくい部分もある

「毎日丁寧に歯磨きをしているから、歯科医院でのクリーニングは必要ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。

毎日のセルフケアは、むし歯や歯周病を予防するうえでとても重要です。一方で、歯並びや歯の形、歯ブラシの当て方などによっては、丁寧に磨いているつもりでもプラークが残りやすい場所があります。

特に、歯と歯の間や奥歯の後ろ側、歯肉との境目などは、歯ブラシだけでは清掃しにくい部位です。そのため、歯ブラシに加えて、歯間の広さや口腔内の状態に合わせてデンタルフロスや歯間ブラシなどを使用することも、プラークコントロールに役立ちます。

プラーク(歯垢)は、多くの細菌が集まって形成された「細菌性バイオフィルム」です。日常のセルフケアでは、歯ブラシや歯間清掃用具を使って、このバイオフィルムを機械的に除去することが基本となります。

一方、プラークが石灰化して歯石になると、歯ブラシやデンタルフロスなどのセルフケアで取り除くことは困難です。また、歯石の表面にはプラークが付着・停滞しやすくなるため、必要に応じて専門的に除去します。

大切なのは、「毎日磨いているから大丈夫」「セルフケアだけでは不十分」と一律に考えることではありません。普段どの程度プラークをコントロールできているのか、歯石が付着していないかなど、自分のセルフケアの状態を把握することがポイントです。

歯周病と全身の健康との関係

歯周病は、歯を支えている歯肉や歯槽骨などに影響を及ぼす病気です。初期には目立った痛みがないこともあり、自覚症状だけでは変化に気づきにくい場合があります。

また、近年では歯周病と全身の健康との関連についても研究が進んでいます。

なかでも糖尿病と歯周病には双方向の関連があることが知られています。糖尿病による血糖コントロールの状態は歯周病の発症や進行に影響し、反対に歯周炎があることが血糖コントロールに影響する可能性も示されています。

そのほか、歯周炎と心血管疾患との間にも関連が報告されています。ただし、「歯周病があると心血管疾患になる」という単純な因果関係ではなく、喫煙や糖尿病など共通するリスク因子も含めて考える必要があります。

妊娠についても、歯周炎と早産や低出生体重児などの有害な妊娠転帰との関連が報告されていますが、歯周病だけが原因になるという意味ではありません。

このように、歯周病はお口の中だけに目を向けるのではなく、全身の健康状態や生活習慣なども含めて考えることが大切です。

毎日のセルフケアによるプラークコントロールを基本としながら、必要に応じた歯周病の治療や管理を続けていくことが、歯周組織の健康を維持するうえで重要になります。

定期的な受診は将来の負担軽減につながる?

「定期的にクリーニングへ通うと、そのたびに費用がかかるので負担に感じる」という声もあります。症状がない状態で定期的に費用や時間をかけることに、疑問を感じる方もいるでしょう。

ただし、定期的な受診の目的は、毎回クリーニングをすることだけではありません。むし歯や歯周組織の状態、セルフケアの状況などを確認し、その時の状態に応じて必要なケアを行うことも含まれます。

むし歯や歯周病は、初期の段階では自覚症状が乏しいことがあります。定期的に口腔内の状態を確認することで、自分では気づきにくい変化を把握しやすくなることは、定期受診のメリットの一つです。

一方、病気が進行すると、状態によっては根管治療や補綴治療など、より多くの処置や通院が必要になる場合があります。歯を失った場合には、ブリッジや義歯、インプラントなどが治療の選択肢になることもあります。

ただし、定期的に受診していれば将来の治療が必ず避けられるわけではなく、生涯にかかる歯科医療費が必ず少なくなるとも一概にはいえません。

費用だけで比較するのではなく、むし歯や歯周病の予防、早期発見、現在の口腔内の状態を把握する機会なども含めて、定期的な管理の意味を考えることが大切です。

日本でも重視される予防と定期的な口腔管理

歯科医院は、歯が痛くなったときに治療を受けるだけの場所ではありません。むし歯や歯周病の予防、治療後の状態の維持などを目的として、継続的に口腔内の状態を確認することも歯科医療の重要な役割です。

日本では、80歳になっても20本以上の自分の歯を保つことを目標とした「8020運動」が1989年から推進されるなど、長期的に歯と口の健康を維持する取り組みが行われてきました。

また、定期的な管理では、単に毎回歯をきれいにすることだけが目的ではありません。むし歯や歯周組織の状態、セルフケアの状況などを確認し、一人ひとりの状態やリスクに応じて必要なケアを考えていきます。

「痛くなってから治療する」だけではなく、現在の状態を把握しながら歯と口の健康を維持していくことも、定期的な口腔管理の大切な目的です。

歯のクリーニングが必要ないという知恵袋の疑問のまとめ

今回は、「歯のクリーニングは必要ない?」というYahoo!知恵袋などで見られる疑問をもとに、歯石除去の目的やセルフケアとの違い、通院回数、保険診療と自費診療などについて解説しました。

「歯石を取ってもまた付くから意味がない」「毎日きちんと磨いているからクリーニングは必要ない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、歯科医院で行われるケアには、歯石の除去だけでなく、むし歯や歯周組織の状態、セルフケアの状況などを確認する目的もあります。

一方で、「すべての人が同じ頻度でクリーニングを受ける必要がある」というわけでもありません。必要なケアの内容や間隔は、歯周組織の状態、歯石の付着、セルフケアの状態、むし歯や歯周病のリスクなどによって異なります。

毎日のセルフケアでは、歯ブラシに加えて、必要に応じてデンタルフロスや歯間ブラシなどを使用し、プラーク(細菌性バイオフィルム)をコントロールすることが基本です。一方、石灰化して歯石になるとセルフケアでの除去は難しくなるため、必要に応じて専門的に除去します。

また、保険診療と自費診療は、単純に「どちらがきれいになるか」「どちらが優れているか」で比較するものではありません。目的や処置内容が異なるため、自分がどのような目的でケアを受けているのかを理解することも大切です。

「クリーニングは必要」「必要ない」と一律に判断するのではなく、毎日のセルフケアを基本としながら、自分の口腔内の状態やリスクに合わせて必要なケアを選択していきましょう。

監修者情報

歯科衛生士 上田彩華

プロフィール

総合病院口腔外科勤務、歯科衛生士専門学校教員を経て、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 歯周病態学分野にて歯周病学および感染管理について研鑽を積む。
現在はフリーランス歯科衛生士として、複数の歯科医院での臨床支援や院内研修に従事。また、歯科衛生士向けコミュニティ「DHAile」を主宰し、歯周基本治療教育やキャリア支援、セミナー活動を行っている。
「考えてできる歯周基本治療」をテーマに、根拠に基づいた予防・歯周ケアの普及に取り組んでいる。

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